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Category: 読書記録

「くらべる時代 昭和と平成」

図書館でふだんあまり立ち寄らない棚の前を通った時に
ふと、おもしろそうな本をみつけました。

「くらべる時代 昭和と平成」
おかべたかし・文 /  山出高士・写真
https://amzn.to/2Imy83f

オムライス、日傘、教科書など
昭和の時代に使われていたものと平成の時代になって使われているもの
それぞれの写真を見開き2ページに並べ、
続く2ページでそれらにまつわるエピソードを綴るという構成で、
34組の身近なものが昭和と平成という時代の変化で
どのように変わったかが紹介されています。

いちばん驚いたのが横断歩道の形。
ずっと縦線と横線で描かれた“はしご型”と思い込んでいたけれど、
最近の横断歩道は横線のみだということ。

縦線と横線で囲まれた部分に水が溜まって
スリップの原因となってしまうという理由から
平成の初め頃から徐々にはしご型の横断歩道はなくなっていったのだそう。

確かに近所の横断歩道を見てみると、縦線がない!
毎日横断歩道を見ているのに、まったく気づいていませんでした。
こうやって先入観で認識してしまっているモノゴトって
たくさんあるのだろうなと、ドキッとしました。

とりわけ懐かしく感じ、心あたたまるエピソードが印象的だったのが、
個性的な形をしたコンクリート製の滑り台の話。

昭和30年〜40年代はまだ遊具専門の業者が少なくて、
公園の施工を請け負った地元の業者が子どもたちを喜ばそうと
あれこれ知恵を絞ってユニークな形を作っていたのではないかと、著者は想像しています。
おじさんたちが ああでもないこうでもないと考えている姿を思うと、
ふっと口元が緩みます。

確かに、自分が子どもの頃はいろんな形の滑り台がありました。
私がよく行ってた公園の滑り台の下に砂場があって、
その砂に犬の糞が時折混じっていたのも
もしかすると昭和時代ならではのエピソードなのかも。

平成の寿司は昭和の寿司に比べ、シャリが小さくなってネタ数が増えているのだそう。
こんな風に桶に入ったお寿司ももう長らく見ていないなぁ。

物流の変化に伴って、贈答品のフルーツが籠盛りから箱詰めにかわり、
今ではこの籠をつくる職人が減少し、籠の値段が高騰しているのだとか。

「ああ、昔はそうだったな」と
懐かしく昭和を振り返りつつも、
いわゆる“平成っぽい“と感じるものって、
2000年代以降に作られたものが多いということにも気づきました。

今では「昭和な」という言葉は、
「懐かしい」とか、「レトロな」という意味合いで使われることが多いけれど、
昭和の空気と平成の空気がゆるく入り混じった平成ひと桁時代(1990年代)を経て、
次第にそういった意味合いが醸成されていったのかな、とも思いました。

来年の今頃はもう違う元号になっているけれども、
「平成」はどんな印象をもった言葉として、近い将来に使われるんだろう。

小さなサイズでパラパラと読みやすく、
まもなく終わろうとしている平成という時代の流れを振り返ることができ、
平成最後の夏にとても楽しめる一冊でした。

となりのイスラム

渦潮で有名な鳴門海峡周辺には、いくつかの島があります。
それらの島と四国本土を結ぶ渡船があり、
鳴門教育大学がある高島と、
多くの商業施設がある黒崎を結ぶ「黒崎渡船」は、
朝から夕方までたくさんの人が利用しています。

5年前に、この渡船を1日密着して取材したことがあります。
その時、ヒジャブをかぶった留学生に出会いました。
とてもかわいらしい雰囲気のこの二人は
声をかけると快く取材に応じてくれました。

けれども声をかけるまでに一寸
「ムスリムの女の人にカメラを向けてもいいのだろうか」
という、迷いが生じました。

また、ヒジャブを被った姿を見て
「ムスリムの女の人は服装に制約があって、大変そう」
とも感じていました。

それは、
マスメディアで流れてくるイスラム教徒に関するニュースはネガティブなものが多く、
ムスリム女性はいろいろと抑圧されているというイメージを持っていたからにほかなりません。

それから数年。
初めて訪れたイスラム国家のマレーシアでは
ファッショナブルな格好をしたムスリムの女性をたくさんみかけました。

色使いや柄合わせが絶妙で、とても素敵で
いろんな場所で彼女たちのファッションチェックをするのは、
マレーシアでの旅の間の小さな楽しみでした。
クアラルンプールにあるモールでは
カラフルなヒジャブやバジュクロンと呼ばれる民族衣装を売っているお店がたくさんあって
ショッピングを楽しんでいる女性たちの姿をよく見かけました。
ファッションを楽しむ心は、宗教や住んでる地域は異なれど万国共通なのだなぁと。

また、ムスリムの男性がとても優しいことも印象的でした。
「一人旅をしている」というと、
いろいろ心配してくれたり、親切に情報を教えてくれたり。
欧米の「レディファースト」的な優しさとはまた違って、
女性は守るべきものとして大切に扱ってくれているような感覚、とでもいうのでしょうか。
それがとても新鮮でした。

どうやらこれまで自分が抱いていたイスラム教やムスリムのイメージは、
ものすごくバイアスがかかったものではないか。
ムスリムの国で感じたムスリムの人たちの本当の姿を、もっと知りたい。
自然とそのように思うようになり、
帰国してからは、暇さえあればイスラムに関する書籍を貪るように読んでいます。

その中でも読みやすく、イスラムの人たちを理解するのに役に立ったのが
となりのイスラムという本。

ミシマ社から2年前に出版されたこの本は
トルコに住居を持ち、イスラムの人たちと草の根の交流をつづけながら
イスラム世界を研究し続けている内藤正典さんが書かれたもの。

イスラムのお祈りって?
どうして女性はヴェールを被るの?
豚肉やお酒がNGなハラルって?
一夫多妻制って?
イスラム教徒のセックス観って?

など、日本人がイスラムの人たちに思い描く素朴な疑問への回答を交えながら、
イスラム圏の人々生活や考え方を紹介しつつ、
非イスラム教徒であるわれわれが彼らにどう接すればよいのかが、
とても分かりやすく読みやすい文章で綴られています。

この本を読むことで、
日本に入ってくるイスラムに関する情報は
ずいぶんと偏ったものだということを改めて感じました。

とりわけ、この本を読んで印象的だったことがあります。

それはフランスでは公の場所で
イスラム教の女性がしているヴェールやスカーフをすることを法律で禁止したという話。
“ファッションの国”“自由の国”のイメージが強いフランスで
そのようなことが行われていることを、全く知りませんでした。
https://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-20537920110411
https://www.huffingtonpost.jp/2016/08/18/burkini_n_11581110.html

パリで起きたテロ事件はとても哀しい出来事だけれども
それは日本人も含めた西欧型の考え方をする人たちにとって
欧米やキリスト教国側の発信だけでは、
見えづらくなっている根深い問題がたくさんあることに気づかせてくれました。

近い将来、世界人口の3分の1がイスラム教徒になると見込まれているそうです。
イスラムの本当のことを知らないから、勘違いしてしまう。

欧米列強の植民地支配の時代から続く、
キリスト教最優先の価値観だけでは立ち行かなくなってきているし、
イスラム教徒だろうが何だろうが、
まず人間として同じ土俵に立たなければ、
建設的なことは何も生み出せないということ。

そしてそれを大きなマクロの視点ではなく、
「となりにいるイスラム」を知ることを通して、感じること考えることの大切さを
この本を通して学んだように思います。

サトコとナダ(1) (星海社コミックス)
ムスリムのルームメイトとの暮らしを描いたこの漫画もとてもよかったです。

小林麻央さんから
受け取ったもの

小林麻央さんが逝去されて、まもなくひと月。

闘病しながら書かれていたブログをずっと、ずっと…読んでいました。
癌と戦っていた父の姿と重ね合わせることもしばしばあったので、
訃報を知ってしばらく経つにも関わらず、
なんとも言えない哀しみと喪失感で心が曇った状態が続いています。

身内を失った時は気持ちが張り詰めていたのと
煩雑な手続きで慌ただしかったことで
あまり深く味わうことができなかった感情を、
今、時間差で味わっているような感じ。

そんな折、
父の数ヶ月前に癌が発覚し、
同じく父の数ヶ月前に逝去された父親を持つ
遠く離れたところに住む友人と、久しぶりに会う時間を持つことができました。

「小林麻央ちゃんのこと、つらかったよね」と、
どちらからとなく切り出し、
それぞれの父の最期のことを話すことで、
寂しさや哀しさといった感情が癒えていくのを感じました。
「カタルシス」ってこういうことを言うんだな。

小林麻央さんのブログを読むようになったのをきっかけに
市川海老蔵さんのブログもちょくちょく覗くようになりました。

そして、麻央さんと海老蔵さんのブログを通して
少しずつ歌舞伎に興味が湧いてきました。

そんなこともあって、この三連休は歌舞伎にゆかりのある書籍を読書三昧。
海老蔵さんの父親の十二代目市川團十郎さんが書いた團十郎の歌舞伎案内
そして祖父である十一代目市川團十郎夫妻をモデルに描かれた宮尾登美子の小説きのね

團十郎の歌舞伎案内は十二代目市川團十郎が青山学院大学で行った講義を書籍化したもの。
大学生に語りかけるような口調で、市川宗家成田屋の歴史や歌舞伎の演目について書かれていて、初心者にもとてもわかりやすい内容でした。
図書館で借りた本だけど、手元に置いておきたくなる一冊。

女中から十一代目市川團十郎の正妻となった女性の生涯を描いたきのねを読むのは、10年ぶり2回目。
以前読んだときは歌舞伎に対する知識もほとんどなかったにも関わらず、宮尾登美子の圧倒的な筆力によって描かれた、愛する男性のために献身的に尽くす主人公の健気で気丈な生き方に、ぐいぐいと引き込まれるように読んだ記憶があります。
今回は「團十郎の歌舞伎案内」を読んだ後に読んだので、歌舞伎の歴史や背景的な知識が加わり、また当代海老蔵に受け継がれているものを想像しながらリアルに読み進めることができ、ものすごい集中力で一気に上下巻2冊を読み終えてしまいました。
きっとまた数年後に読み返したくなる名作。

小林麻央さんのブログと出会うことで、改めて出会うことができた歌舞伎の世界。
少しずつ機会を見つけて、劇場にも足を運んでみたいと思いました。

團十郎の歌舞伎案内 (PHP新書 519)
市川 團十郎(十二代目)
PHP研究所
きのね〈上〉 (新潮文庫)
宮尾 登美子
新潮社
きのね〈下〉 (新潮文庫)
宮尾 登美子
新潮社
売り上げランキング: 15,245

kindle unlimitedを
1ヶ月使ってみて

インプットの量を増やす」ために
今年からはじめたことのひとつが
kindle unlimitedの契約をしたこと、です。

kindle unlimitedとは、
アマゾンの電子書籍読み放題サービスのこと。
月額980円でサービスに登録されている書籍や雑誌が
何冊でも無制限に読むことができます。
https://www.amazon.co.jp/gp/kindle/ku/

これを始めようと思ったきっかけは
とにかくkindle一台さえ鞄に入れておけば
絶えずなんらかの活字に触れることができると思ったから。

紙の本も、もちろん好きだけど
部屋の本棚がいっぱいなので
最近はできるだけ図書館で借りるようにしてるし
せっかく図書館で本を借りても
出かける時に鞄に入れるのを忘れて
結局時間つぶしにスマホを触ってしうことが多くなってしまってたので。

気になる本をポチポチダウンロードしておいて
移動の合間に、出先で、リビングで、寝室で、
その時の気分で読みたいものを気ままに読むことができるから
自然と読む量が増えます。

ちょうど使い始めて1ヶ月。
紙の本だと手に取らないようなものも意識して選んでるので
まさに「乱読」状態。
図書館とどこでもドアで繋がっているような感覚です。

以下、1月に読んだ本の備忘録。
個人的には宣伝会議から出版された本がラインナップされているのが、ありがたい。
雑誌はkindleで読むとちょい味気ないけど、それでも最新号が読めるのは便利!

そしてkindle unlimitedを始めたから知れたことで驚いたことは
高須クリニックの高須先生と漫画家の西原理恵子さんがおつきあいしているということ!!
全く知らなかった!!

西原理恵子さんが描いた『ダーリンは70歳』という漫画のスピンオフ本として
高須先生が書いた『ダーリンは70歳/高須帝国の逆襲』。
熟年カップルがお互いを必要とし、
純粋に“好き”という気持ちだけで寄り添っている姿がおもしろおかしくほのぼの描かれていて
下手な恋愛小説よりも、人として生きることや愛するということへの真実に迫る味わい深さがありました。
おすすめです。

読んだ本を定価で買うと、1万円は余裕で越してるはず。
活字好きにはたまらないサービスなので、しばらく続けてみようと思います。

「ぼくの道具」
石川直樹

友達に借りた本がおもしろくて、一気に読んだ。

世界中を旅する写真家 石川直樹さんの新著「ぼくの道具」。
2015年夏に敢行したK2長期遠征で使用した道具たちを、
愛用の理由とともに綴ったエッセイ集。
ヒマラヤ山脈の西端に位置する「K2」はエベレストに次ぐ世界第2位の高さで、
世界一登ることが難しいと言われている山。

ヒマラヤンパンツ

極地を探検する人にとって
道具は過酷な外的環境から生命を守るためのいわば命綱。

見たこともないような防寒具や登山靴など
ハードな「山の道具」の話ばかりかと思いきや、
長期間の厳しい環境で平静を保つために
DVDやkindleなどの娯楽道具が必要不可欠であるという話や、
無味乾燥なベースキャンプで「良い匂いがすると感動する」と
バニラの匂いのシャンプーやバラの香りの化粧水を愛用していると言った意外な話などなど。

きっと、私にとっては一生縁のない遠い世界だけれども
道具を通して紹介される情景にぐっと興味を惹かれ、
ヒマラヤを探検する旅人たちの営みに親しみすら感じた。

装丁や挿絵も、とても素敵な一冊だった。

装丁

 


「ぼくの道具」石川直樹(平凡社)

「三樹の教え」と
「気仙沼ニッティング物語」

調べ物をしていたら、ハッとする言葉に出会った。

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1年先を考えるなら、種をまけ。
10年先を考えるなら、木を植えよ。
100年先を考えるなら、人を育てよ。
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そして、ちょうど昨日読み終わった「気仙沼ニッティング物語」の内容とリンクした。

東日本大震災の被災地で、新しい産業を産み育てていく様子が描かれた物語。
漁師町の気仙沼は漁網の修繕をはじめ、編み物をする習慣が根付いていた。
この町の人々が昔から親しんできた編み物を世界に誇れる商品にすることで、
復興の途上にある気仙沼の人々に確かな希望を作り出した。

地域の人とのつながり
ものづくりの厳しさと楽しさ
そして強い志を持って等身大で挑戦する姿に
とても元気をもらいあたたかな気持ちになった。

一時的なブームではなく、地域に根付いていく産業ってこうしてつくられていくのだな。

さて、私はどのくらい先のことを見据えて、日々行動してるんだろう。
忙しさにかまけて場当たり的になってないか。
ちゃんと土を耕して種を蒔いてるか、木を植えようとしてるのか、「人なんて育てられない」と決めつけてないか。
そんなことを思った、寒い雪の夜。


気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社
御手洗 瑞子(新潮社)

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