「あおあお」という文化情報誌の編集に携わっていました。
http://aoao-tokushima.com/

この冊子では
“徳島の暮らしに身近にあるものの大切さに気づいてもらえたら”という思いで
地域に根付く見過ごされがちな文化や風習などを題材に取り上げ
2013年11月から2017年3月までの間で、11冊制作しました。

先日、神山で開催されたInter Local Meetingというイベントに、
この冊子の編集者として登壇させていただきました。
このイベントを企画したのは、西村佳哲さん

急遽決まったイベントで、
あまり準備に時間を割くことはできなかったのですが、
3年半この仕事に携わらせていただいたことへの恩返しの気持ちで
簡単なスライドを準備して1時間お話しさせていただきました。

「正直に
 直接、見て聞いたものだけ。
 答えに向かって作り込まない正直さ。」

これは2014年の春に渋谷ヒカリエのd47 MUSEUMで開催された
文化誌が街の意識を変える展」に出展した時に
「あおあお」を紹介するコメントとして添えられたもの。

クライアントでもある徳島県の担当者さんが書いてくださったものだけれども、
「あおあお」が大切にしていたことは
このステートメントにすべて集約されていると、私は思っています。

例えば、徳島城址を取材して作った「城内さんぽ」という第3号
お城のことなので図書館や博物館に行くとたくさんの文献や資料があり、
もちろん取材前の事前知識としてそういったものに目は通すけれども、
あくまで“直接現地で見て 聞いたものだけで紙面をつくる”ことに徹しました。

かつて城山の南側を流れていて戦後に大幅に埋め立てられJRの線路になった「寺島川」の取材では、かなり苦戦しました。
線路沿いや近隣の住宅を1軒1軒まわって、当時のことを知っている人をみつけて話を聞き出し、情報を拾っていきました。

何日も歩いてまわって、ようやく川を埋め立てている頃のことを鮮明に覚えていて、しかも写真を持っている方に出会った時は、宝探しで宝物を探し当てたような気分でした。

この写真の一番手前に写っているのはかちどき橋。
その横を流れているのが「寺島川」で、当時は貯木場になっていたのだそう。
現在この場所には徳島東警察署が建っています。


「あおあお」の制作に携わって、私自身が実感として強く学んだことは

車だと気付かず通り過ぎてしまうことも
歩いてみることで発見があり
気になったモノゴトについて立ち止まって話を聞いてみると、必ず物語がある。

ということ。


徳島の「夜」を切り取って編集した第5号で出会った夜釣りを楽しむ大学生たちからも、そのようなことを感じました。
いつも車でサッと通り過ぎるだけの川沿いの道も、釣りが大好きな彼らにとっては絶好の遊び場。
大学の空きコマにも釣竿を持って釣りに出かけるという県外出身の彼らから「大学受験で志望校を選ぶ時に、徳島は川も海もたくさんあるから釣りを楽しめると思った」という言葉を聞いた時に、これまで気づかなかった徳島の魅力のひとつに気づくことができました。


「あおあお」の取材では私は数千枚の写真を撮りました。
冊子に使われたのは本当にごくごく一部。
ボツ写真で1号〜11号までをざざっと振り返ってみます。

1号「水上の道」
徳島を東西に流れる吉野川に橋が架かっていない時代には「岡田式渡船」と呼ばれる船が南北を結んでいたそうです。
なんと車も載せることができる“カーフェリー”だったとか!
元船着場だったあたりをうろうろしていると、当時船頭さんをしていたおじいちゃんに出会うことができ話を聞かせてもらいました。
鉄道や道路ができるまでは、川が「道」としての重要な役割を担っていました。

 

2号「味はつづく」
山(上勝町)と海(椿泊)それぞれの家庭で受け継がれている料理について取材をさせていただいた号。
瀬戸内海と紀伊水道のまじわる豊かな漁場・椿泊の港で出会った男前の漁師さん。
山の食卓も海の食卓も、とても健やかで豊かでした。
お腹いっぱいごちそうになりました。

 

3号「城内さんぽ」
現在JRの線路や東警察署が建っている場所は、もともと川だったそう。
寺島川の取材では図書館の郷土資料担当の司書さんや、地域にお住いのたくさんの方に協力していただき、記事としてまとめることができました。
そしていつものお散歩コースであるこの公園を散歩する時にあいさつを交わす人が増えました 笑。

 

4号「汽車が走る町」
徳島は全国で唯一電車が走っていない県。
JR四国の方が快く取材にも協力してくださって、ふだん入れないような場所にもお邪魔させていただきました。
徳島駅では車両は手洗い洗車されていました。
この号は鉄道ファンらしき方たちからの送付依頼も多かったようです。

 

5号「夜がきた」
ハモ漁師さんの漁船に乗せていただくという貴重な体験をさせてもらいました。
船酔いとの戦いで大変だったけれども、沖から見える徳島の街の灯りがとても印象的でした。
そういえば私は、釣りや漁など魚にまつわる記事を担当することが多かったなぁ。

 

6号「獲物がいる」
イノシシ猟の取材途中で私は膝を負傷…涙。
表4の「徳島ほれほれ」のコーナーでは「花輪」を紹介しました。
徳島県庁にずらりと並んだ5つの花輪は圧巻でした。

 

7号「食八景」
同じ県内でも「ところ変われば食の風景も変わる!」ことに驚きました。
鳴門の赤飯にごま砂糖、鳴門うどん、徳島ラーメン、そば米汁、お好み焼きなど、タウン誌やケンミンショーなどでもよく取り上げられるネタを、“あおあおらしい切り口”で伝えることができたと思ってます。

8号「川のそば」
かつて、吉野川の氾濫によって運ばれてくる肥沃な土によって藍の生産地として栄えた川に浮かぶ島、舞中島。
江戸時代から残る高い石垣や、昔の人の知恵によって工夫された建物も印象的だったけれども
今もここで生き生きと暮らす人々との出会いがうれしかったです。
肥沃な畑で育った野菜を、抱えきれないくらいたくさん頂いて帰ったのも懐かしい。

 

9号「町の小さな工場」
住宅街の中に溶け込む佇まいのあられ屋工場、昔ながらの製法をしっかり守り続ける和三盆の製糖所、熊野筆の軸をつくっている木工所、私自身も愛用している包丁をつくっている鍛冶屋さん。
派手な看板を掲げるわけでなく、大げさな宣伝をするわけでもなく、手間暇かけてコツコツと実直なものづくりをする光景を見せていただき、背筋が伸びる思いがしました。

 

10号「県境」
「隣の県と接する場所ではどんな風に人やものが交わり、どんな風景が見えるのか」そんな思いで4つの県境を巡った号。
大鳴門橋のてっぺんに登ったり、マチュピチュのように急峻な斜面に建つ集落を訪れたり。
通過はすることはあってもあえて立ち止まる機会がない県境の地をじっくり巡ることで、たくさんの発見がありました。

 

11号「藍がある」
知ってるようで、知らない藍のこと。
藍染作家さんの「藍建て」と、藍を育てている小学校を取材させていただきました。
ふたつの現場におじゃまして、「藍は生きている」ということを、知識としてではなく体感として感じることができました。
子どもたちが藍を「藍ちゃん」と呼んで、毎日自分たちでお世話している姿がかわいかったです。


「あおあお」は11号をもって、終了となりました。

こうやって振り返ってみると
本当にたくさんの人との出会いがあって、
いろいろお世話になったなぁとしみじみと感謝の気持ちが湧いてきます。

この冊子の制作を通して
私自身が自分の故郷である徳島のことを深く知ることで
この土地の文脈や自分のアイデンティティを再確認することができたように思います。

そして、それが自分を支える楔のようなものになってくれるような気もします。

…と、イベントではこんなようなことをトップバッターでお話させていただきました。

その後に続く
佐那河内村で「さなのごちそう便り」を制作している坂口祐さん
益子でミチカケを編集している簑田理香さんのプレゼンがとても素晴らしく
後から我がプレゼンを思い出すと伝えきれなかったこともたくさんあるような気がして
準備不足を差っ引いたとしても、出来映えは65点くらいかなぁ。。

それでもこのような機会を与えてくださったことを
とてもありがたくうれしく思ってます。
企画してくださった西村さん
お声がけしてくださった遠近(をちこち)の東尾厚志さん、ありがとうございました。

 


 

そして、この3年半でこのメンバーで一緒に11号の冊子を制作できて、本当によかった。
今はただそう思います。

徳島県文化振興課の伊澤弘雄さん
AD FAHREN 大東浩司さん
KIGI PRESS 森香菜子さん
ありがとうございました!


「あおあお」は最新の最終号を含め、
郵送で送付申し込みも受け付けています。
http://aoao-tokushima.com/haifu/#moshikomi
気になった方は、ぜひ。

友人知人の方は声をかけていただいたら、お渡ししますね。

 


 

これまで「あおあお」を紹介してくださった記事も併せて紹介しておきます。
しっかり読み込んでくださっていただいたあたたかな声も、制作中の励みになりました。
ありがとうございます。

今日のコラム/文化誌が街の意識を変える展〜土屋鞄製作所
http://www.tsuchiya-kaban.jp/contents/detail.php?product_id=1625

めくるめくフリーペーパーの世界。
「Only Free Paper」設立者が選ぶ、今注目のフリーペーパー5選:西日本編
http://www.lifehacker.jp/2015/05/150503freepaper_west.html

旅をもっと楽しむために手に入れたいローカルマガジン
https://sunchi.jp/sunchilist/tokushima/4242