渦潮で有名な鳴門海峡周辺には、いくつかの島があります。
それらの島と四国本土を結ぶ渡船があり、
鳴門教育大学がある高島と、
多くの商業施設がある黒崎を結ぶ「黒崎渡船」は、
朝から夕方までたくさんの人が利用しています。

5年前に、この渡船を1日密着して取材したことがあります。
その時、ヒジャブをかぶった留学生に出会いました。
とてもかわいらしい雰囲気のこの二人は
声をかけると快く取材に応じてくれました。

けれども声をかけるまでに一寸
「ムスリムの女の人にカメラを向けてもいいのだろうか」
という、迷いが生じました。

また、ヒジャブを被った姿を見て
「ムスリムの女の人は服装に制約があって、大変そう」
とも感じていました。

それは、
マスメディアで流れてくるイスラム教徒に関するニュースはネガティブなものが多く、
ムスリム女性はいろいろと抑圧されているというイメージを持っていたからにほかなりません。

それから数年。
初めて訪れたイスラム国家のマレーシアでは
ファッショナブルな格好をしたムスリムの女性をたくさんみかけました。

色使いや柄合わせが絶妙で、とても素敵で
いろんな場所で彼女たちのファッションチェックをするのは、
マレーシアでの旅の間の小さな楽しみでした。
クアラルンプールにあるモールでは
カラフルなヒジャブやバジュクロンと呼ばれる民族衣装を売っているお店がたくさんあって
ショッピングを楽しんでいる女性たちの姿をよく見かけました。
ファッションを楽しむ心は、宗教や住んでる地域は異なれど万国共通なのだなぁと。

また、ムスリムの男性がとても優しいことも印象的でした。
「一人旅をしている」というと、
いろいろ心配してくれたり、親切に情報を教えてくれたり。
欧米の「レディファースト」的な優しさとはまた違って、
女性は守るべきものとして大切に扱ってくれているような感覚、とでもいうのでしょうか。
それがとても新鮮でした。

どうやらこれまで自分が抱いていたイスラム教やムスリムのイメージは、
ものすごくバイアスがかかったものではないか。
ムスリムの国で感じたムスリムの人たちの本当の姿を、もっと知りたい。
自然とそのように思うようになり、
帰国してからは、暇さえあればイスラムに関する書籍を貪るように読んでいます。

その中でも読みやすく、イスラムの人たちを理解するのに役に立ったのが
となりのイスラムという本。

ミシマ社から2年前に出版されたこの本は
トルコに住居を持ち、イスラムの人たちと草の根の交流をつづけながら
イスラム世界を研究し続けている内藤正典さんが書かれたもの。

イスラムのお祈りって?
どうして女性はヴェールを被るの?
豚肉やお酒がNGなハラルって?
一夫多妻制って?
イスラム教徒のセックス観って?

など、日本人がイスラムの人たちに思い描く素朴な疑問への回答を交えながら、
イスラム圏の人々生活や考え方を紹介しつつ、
非イスラム教徒であるわれわれが彼らにどう接すればよいのかが、
とても分かりやすく読みやすい文章で綴られています。

この本を読むことで、
日本に入ってくるイスラムに関する情報は
ずいぶんと偏ったものだということを改めて感じました。

とりわけ、この本を読んで印象的だったことがあります。

それはフランスでは公の場所で
イスラム教の女性がしているヴェールやスカーフをすることを法律で禁止したという話。
“ファッションの国”“自由の国”のイメージが強いフランスで
そのようなことが行われていることを、全く知りませんでした。
https://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-20537920110411
https://www.huffingtonpost.jp/2016/08/18/burkini_n_11581110.html

パリで起きたテロ事件はとても哀しい出来事だけれども
それは日本人も含めた西欧型の考え方をする人たちにとって
欧米やキリスト教国側の発信だけでは、
見えづらくなっている根深い問題がたくさんあることに気づかせてくれました。

近い将来、世界人口の3分の1がイスラム教徒になると見込まれているそうです。
イスラムの本当のことを知らないから、勘違いしてしまう。

欧米列強の植民地支配の時代から続く、
キリスト教最優先の価値観だけでは立ち行かなくなってきているし、
イスラム教徒だろうが何だろうが、
まず人間として同じ土俵に立たなければ、
建設的なことは何も生み出せないということ。

そしてそれを大きなマクロの視点ではなく、
「となりにいるイスラム」を知ることを通して、感じること考えることの大切さを
この本を通して学んだように思います。

サトコとナダ(1) (星海社コミックス)
ムスリムのルームメイトとの暮らしを描いたこの漫画もとてもよかったです。