西武新宿線 上井草駅のほど近くに、小さなサンドイッチのお店があります。
「カリーナ」という名のその店は
雑誌のサンドイッチ特集やinstagramなどでも時々見かける有名店。

ちょうど「ちひろ美術館」に長島有里枝さんの展示を観に行く途中にあったので、
早稲田でお蕎麦を食べてお腹いっぱいだったけれども、立ち寄ってみました。

さすがの人気店。
13時ちょっと過ぎに伺うと、ほとんどの商品が売り切れていました。
けれどもせっかくなので、
わずかに残っていたサンドイッチをふたつテイクアウトすることに。
感じのいい60代くらいの女性が気持ちよく対応してくれました。

帰路についた羽田空港で、夕食代わりにこのサンドイッチをいただきました。
ハムチーズサンドとフルーツサンド。
噂に違わず、どちらもとても美味しい。
なんともいえず素朴で実直なやさしい味で、とても心が動きました。

「この美味しさの秘訣はなんだろう?パン?具材?」
と気になり、《カリーナ》で検索をしてみました。

すると見つけたのが、お店のオフィシャルホームページ。
http://kar-na.la.coocan.jp/
インターネットの黎明期によく見た、懐かしいデザイン。
きっとお店の方が手作りで作ったホームページなんだろうなと、微笑ましい気持ちで
サンドイッチの美味しさの秘訣を探り当てるべくページをクリックしていると
「おやじのひとりごと」というコンテンツをみつけました。
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage18a.html

2003年から2015年まで月1回のペースで綴られた、先代の店主が綴ったエッセイ。
これがとても魅力的で、クリックして読み進める手をなかなか止めることができませんでした。

たとえば、こんな記事たち。

カリーナ店名の由来
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage2.htm

創業時に幼い子どもたちも一緒に考えて作った
店名やロゴをとても大切にしていることだったり。

「はなまるマーケット」からの依頼
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage63.html

はなまるマーケットから“サンドイッチをつくる技を見せて欲しい”という
取材の依頼もあったものの、
何か特別な技を持ち合わせているわけでもないし、
お店の宣伝にはなるのはありがたいけれども…と
正直に事情を伝えて断って、ホッとしている姿であったり。

値上げのこと
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage64.html

原材料費の高騰に伴う苦渋の策として、
値上げを決心した心の内を正直に書き綴っていたり。

「カリーナ」同窓会
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage28.html

歴代のバイトを務めたスタッフや常連さんたちとの交流だったり。

山や海を愛し、時には友人と、時には家族と、時には1人でと
あちこちへ旅に出た思い出を綴っていたり。

友のふるさと多摩川線を歩く
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage66.html
ダイビング一人旅
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage65.html
カシオペアで知床旅行
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage124.html

地元上井草を拠点に練習を重ねる早稲田のラグビー部の熱烈なファンで、
早稲田ファンのお客様や地元の人たちの交流を楽しんでいる様子だったり。

早稲田ファン
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage47.html
早稲田ラグビー31年ぶりの大学選手権連覇
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage46.html

なんと黒ニンニクに興味を持って自作したという、
好奇心旺盛でお茶目な一面も。

黒焼きニンニク
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage121.html

そして、時には政治についてしっかりとした自分の言葉で意見を述べたり、行動したり。

原発の「安全神話」
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage102.html
危険な「特定秘密保護法案」
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage130.html
許せねえ!
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage134.html

仕事を愛し、家族を愛し、地元を愛し、友を大切にし、
時には虚偽や疑問だらけの政治を憂い憤り、
震災の被災地に思いをはせ、
来る日も来る日も、
真面目にコツコツとサンドイッチを作り続けてきた人だということが
書き綴られた文章を通して、じんわりと伝わってきます。

そして、12年続いたエッセイの最後はこの言葉で〆られています。

さいごのひとりごと
「おやじのひとりごと」は、
その時々で真剣に向き合い正直に書いてきたつもりなので、
種々雑多なこの文の中でひとつでも心に残してくれるものがあれば
私が生きてきた証しにもなり、
また、生きてきた価値を確認できることでもあり、
これに勝るものは無いと思っている。
http://kar-na.la.coocan.jp/newpage146.html

2015年に癌との闘病の末、この世を去られたそうです。
自分の最期を見据えて、こんな言葉を遺していけるなんて…。
癌と戦ってきた父の姿と思わず重ね合わせてしまいます。

お会いしたこともないし、
この方から受け継いだ味をたった一度食べたことがあるだけだけど、
生前書き綴った文章のひとつひとつを通して、
なんだか心の深いところで対話をしているような、
そんな気持ちになりました。

そして、
この方の生きざますべてがサンドイッチに
しっかり反映されているからこその、あの美味しさなのだなと。

私が行った時に朗らかに接客してくれたのは
エッセイにもよく登場する奥さんなのでしょう。
いつまでも元気でいて欲しいなと思いました。

そして、
また上井草に降り立った時は、必ず立ち寄って、
あの素朴でやさしい味を求めにいきたいと思います。